便潜血異常 | 山形市の内科・消化器内科・内視鏡内科は城北すずき内科クリニック

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便潜血陽性といわれたら読んでほしいページ

健康診断や大腸がん検診で「便潜血陽性」と結果が出て、このページをご覧になっている方も多いのではないでしょうか。陽性という言葉を聞いて不安になるお気持ちは、とてもよくわかります。便潜血陽性の意味や原因、そして今後どうすればよいのかについて解説していきます。ぜひ、適切な対応につなげてください。

便潜血とは何か

そもそも「潜血」とは？

「潜血」とは、文字通り「潜んでいる血液」という意味です。つまり、目には見えないけれど実際には存在している微量の血液のことを指します。
排便時に出血量が多ければ、便器の中を見るだけで「出血しているな」と容易に判断できます。しかし、出血量が微量だと肉眼ではまったくわかりません。そこで採取した便に試薬を混ぜ、その反応で血液の混入を判定する検査が「便潜血検査」です。
通常、食物が便として排泄される過程で便に血が混じることはありません。もし便潜血検査で血液が検出されたということは、消化管のどこかで出血が起きている可能性があるというサインなのです。

便潜血検査について知ろう

なぜこの便潜血検査を行うのか

便潜血検査の最大の目的は、大腸がんの早期発見です。
大腸がんは早期には自覚症状がほぼない場合も多く、症状が出てから発見されると既に進行していることが少なくありません。この検査を通じて、目に見えない段階の出血を検出することで、大腸がんやその前段階である大腸ポリープを早期に発見し、適切な治療につなげることができます。
厚生労働省は40歳以上の方に対して、毎年の便潜血検査を推奨しています。

便潜血検査はどのように行うのか

便潜血検査は専用のスティックで便の表面を採取し、それを検査機関に提出するという非常に簡便な方法です。自宅で手軽にできる検査で、特別な食事制限や準備は必要ありません。
日本では「2日法」という方法が一般的です。これは、別々の日に採取した2回分の便を検査する方法で、1回だけの検査よりも検出率が高まります。なぜなら、大腸がんがあっても毎日出血するわけではないため、2日間検査することでより確実に病気の兆候を捉えることができるからです。

便潜血検査はどのくらい正確なのか

便潜血検査は非常に高感度で、現在の検査では150ng/ml以上という極めて微量な血液でも検出できます。これは、わずか1〜2mlの出血にも反応できる精度です。
ただし、検査の感度は病変の種類によって異なります。

進行大腸がん：2日法で約85%程度を検出
早期大腸がん・ポリープ：それより低い検出率

つまり、進行したがんほど見つけやすく、早期の病変ほど見逃される可能性があるということです。だからこそ、毎年継続して検査を受けることが重要になります。

便潜血検査を毎年継続して受けることで、大腸がんによる死亡リスクを大幅に減少させる効果があることが、複数の研究で示されています。

便潜血検査の長所と限界とは？

＜便潜血検査の長所＞

・身体への負担がなく、副作用のリスクもほとんどない

・自宅で簡単に採取でき、費用も安価

・継続して受けることで大腸がんの死亡率を下げる効果がある

＜便潜血検査の限界＞

・実際にはがんがあるのに陰性と出る「偽陰性」がある
・がんがないのに陽性と判定される「偽陽性」がある
・検査だけでは大腸がんの確定診断はできない

そのため、便潜血検査はあくまでスクリーニング検査（ふるい分け検査）であり、陽性の場合は必ず精密検査を受ける必要があります。

便潜血検査の結果が示すこと

便潜血検査を受けた約220万人のうち、陽性になる方は全体の約5〜7%です。
そして陽性となった方が精密検査を受けた場合の発見率は

大腸がん：約2〜3%
大腸ポリープ：約50%

と言われています。

つまり、便潜血陽性だからといって必ずがんがあるわけではありませんが、約半数の方に何らかの病変が見つかるということです。この数字は決して低くありません。
一方、陰性だった場合でも完全に安心できるわけではありません。便潜血陰性の方の中でも数千人に一人程度は大腸がんが見つかることがあります。そのため、下痢や便秘が続く、便が細い、腹痛があるなどの症状がある場合は、陰性でも医師に相談することをお勧めします。

血便と下血について理解する

便に血が混じる状態を総称して「血便」や「下血」と呼びますが、厳密には意味が異なります。

血便
鮮やかな赤色の血液が便に混じっている、または便とともに排出される状態を指します。主に大腸や肛門からの出血を意味します。

下血
上部消化管（胃や十二指腸など）からの出血を指すことが多く、便が黒っぽい色（タール便）になるのが特徴です。

便の色でわかること

便の色は出血している場所を推測する手がかりになります。

鮮血便（真っ赤な血）
肛門や直腸など、肛門に近い部分からの出血が考えられます。痔、直腸がん、直腸ポリープ、虚血性腸炎、憩室出血、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群などで腸管蠕動が亢進して肛門近傍の粘膜損傷を生じての出血などが原因として挙げられます。（上部消化管出血も否定はできません）

暗赤色便（赤黒い血）
大腸の奥の方からの出血が疑われます。出血してから排出されるまでに時間がかかるため、血液が古くなり暗い色になります。大腸がん、大腸ポリープ、虚血性腸炎、憩室出血、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎などが原因となります。

粘血便（粘液が混じった血）
赤い血液に加えて粘液のような膜が便に付着している状態です。感染性腸炎や潰瘍性大腸炎、クローン病など炎症性腸疾患が原因の場合が多いです。

黒色便（タール便）
黒くドロッとした便で、胃や十二指腸、食道などの上部消化管からの出血が疑われます。頻度は高くありませんが、小腸出血の場合もあり得ます。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、胃・十二指腸毛細血管拡張症などの可能性もあり、早急な対応が必要な場合も含まれ注意が必要です。

血便を放置すると危険

血便を放置していると、原因となっている病気が悪化し、症状が進行していきます。また、出血持続により速やかな貧血や低血圧を引き起こすこともあります。

目に見える血便・下血がある場合

目に見える血便・下血がある場合、便潜血検査を受ける必要はありません。便潜血検査は「目には見えない出血」を発見するための検査だからです。
血便・下血が確認できる場合は、早急に直接消化器内科を受診し、胃カメラ・大腸カメラ（必要時、CT検査・小腸カプセル内視鏡ないしバルーン内視鏡検査）などの精密検査を受けてください。

便潜血陽性という結果の意味

便潜血検査で血液が検出された状態を「便潜血陽性」といいます。
「陽性」という結果を見て驚かれる方もいらっしゃいますが、これは必ずしも「がん」や「重大な病気」を意味するわけではありません。便潜血陽性は、何らかの理由で消化管（特に大腸）から出血している可能性があるというサインです。

陽性という結果が出た時に最もやってはいけないことは、消化器内科を受診せずに放っておくことです。

自覚症状がないため、「硬い便だったから肛門が切れてしまった」「昔から痔があるからそれが原因だろう」などと自分に都合の良い解釈をしてしまい、精密検査の機会を逃してしまう方が多く見受けられます。

便潜血陽性の原因となる病気

便に血が混じる原因はさまざまですが、ここでは主な疾患について解説します。

痔（じ）

痔は便潜血陽性の原因として非常に多い疾患です。日本人の3人に1人は痔の経験があるといわれるほど身近な病気です。

どうして出血するのか
内痔核・外痔核（いぼ痔）：排便時にいきむことでうっ血して出血したり、硬い便でこすれて出血します
裂肛（切れ痔）：排便時に硬い便で肛門が切れることで出血します

注意点
痔があっても、大腸癌などの病気が同時に存在する可能性も否定できません。「痔があるから大丈夫」と自己判断せず、必ず精密検査を受けることが大切です。

大腸ポリープ

大腸ポリープは大腸の粘膜にできる隆起性の病変です。多くは良性ですが、一部のポリープは大きくなると出血を伴うことがあり、便潜血陽性の原因となります。

特に注意が必要なポリープ
「管状ないし鋸歯状腺腫」と呼ばれるタイプのポリープは、放置すると将来的に大腸がんへと進展する可能性があります。大腸カメラで発見された段階で切除することで、がんの予防につながります。がん化する前に切除することが推奨されます。

炎症性腸疾患（クローン病・潰瘍性大腸炎）

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患では、大腸に慢性的な炎症が生じます。炎症により腸管の壁が損傷を受け、粘膜からの出血によって便に血液が混じることがあります。

特徴的な点
・比較的若い世代に多い
・下痢や腹痛を伴うことが多い
・初期段階では無症状で便潜血のみが陽性となるケースもある

潰瘍性大腸炎について

クローン病について

大腸がん

大腸がんは進行するまで自覚症状がほとんどないため、便潜血検査が早期発見の重要な手がかりとなります。がんの表面からわずかに出血した血液が便に混じることで、便潜血陽性として検出されます。（出血していないタイミングで検査となれば大腸癌があっても検査陰性となる場合もあるため検査結果の解釈には注意が必要です）

早期発見の重要性

早期の大腸がん：内視鏡での切除が可能
進行がん：外科手術が必要

現在、日本では大腸がんが原因で亡くなる方が特に女性では年々増えています。しかし、大腸がんは早期に発見された場合（ステージ1の段階）、5年生存率は90%以上と治癒率が非常に高いがんです。

便潜血検査による早期発見が、大腸がんから命を守る鍵となります。少しでも早期に発見し治療を開始するために、便潜血陽性の際は必ず大腸カメラを受けましょう。
（50歳以上となれば、便潜血陰性でも大腸カメラを受けることを考慮したほうがいいでしょう）

便潜血陽性になったらすべきこと

便潜血陽性という結果が出たら、次に行うべきことは「精密検査」、具体的には大腸カメラを受けることです。
現在の大腸がん検診の全国での精密検査受診率は60~70%と充分な状態とは言えません。

絶対に放置しないでください

ここで最も重要なのは、放置しないことです。

よくある間違った対応
・「痔があるからきっとそのせいだろう」と自己判断する

・「もう一度便潜血検査を受けて確かめよう」と考える
・「1回だけの陽性だから様子を見よう」と放置する

これらはすべて危険な対応です。

再検査は意味がありません

陽性になったからといって、もう一度便潜血検査を受けるのは意味がありません。たとえ再検査で陰性になったとしても、一度陽性になったという事実は変わりません。
大腸がんがあっても毎回便潜血検査が陽性になるわけではないため、1回でも陽性という結果が出たことは重要なサインなのです。必ず大腸カメラによる精密検査を受けてください。

便潜血陽性は早期発見のチャンス

便潜血陽性の方全員にがんがあるわけではなく、実際には多くの方が大きな異常を認めないものです。便潜血検査は「がんを見逃さないための検査・振り分け検査」であることを忘れないでください。
陽性という結果は、大腸がんを早期発見・早期治療できる貴重なチャンスなのです。

陽性の回数とがんの可能性

便潜血検査の陽性回数と大腸がんの関係について、重要なデータをご紹介します。

大腸がんが見つかる確率

1回だけ陽性：約2〜3%
2回とも陽性：約10〜14%

2回とも陽性の場合、がんが見つかる確率は1回のみの陽性と比べて約5倍に上昇します。

進行がんで見つかる確率

さらに注目すべきは、発見されたがんの進行度です。

1回陽性で検査をしてがんが見つかった方のうちの進行がんの割合：約20%
2回陽性で検査をしてがんが見つかった方のうちの進行がんの割合：約55%

2回陽性の場合、発見されたがんの半数以上が既に進行がんという状態です。

1回だけの陽性でも必ず検査を

「1回だけだから様子を見よう」という判断は絶対に避けてください。1回でも陽性が出たら、それは身体からの重要なサインです。必ず精密検査を受けましょう。
特に2回とも陽性の場合は、できるだけ早期に大腸カメラを受けることを強くお勧めします。

精密検査について

大腸カメラが最も推奨されます

便潜血陽性の精密検査として最も信頼性が高く推奨されているのが「大腸カメラ」です。厚生労働省も、便潜血検査の陽性反応が出た場合の精密検査として大腸カメラを推奨しています。（ただ、大腸カメラも必ず挿入困難で苦痛を強く感じる方もいらっしゃいます。近年は、まだまだ発展途上ですが、大腸カメラ挿入困難の方に対して、大腸カプセル内視鏡検査、大腸CT検査なども精密検査の代替手段として導入されつつあります。）

大腸カメラでわかること

内視鏡を使って肛門から盲腸まで大腸全体を直接観察することができます。

・ポリープの有無
・がんの有無
・炎症の状態
・出血部位の確認

必要があればその場で組織を採取（生検）したり、ポリープを切除することも可能です。

診断と治療が同時にできる

大腸カメラの最大のメリットは、診断と治療が同時にできることです。
検査中にがんの元になる可能性のあるポリープが見つかれば、その場で切除することで治療が完了します。これは大腸カメラでしかできない、大きな利点です。

精度が高い検査です

大腸カメラは、大腸の病変を直接観察できるだけでなく、必要に応じて組織のサンプルを採取できたり治療（切除）したりできるため、精密検査の中で最も精度が高い検査です。
特に5mm以下の小さな大腸がんやポリープを見つけることにおいては、大腸カメラより優れた検査はありません。さらに、大腸がんを予防することもできる唯一の検査です。

痛みについての心配

「大腸カメラは痛いと聞いて不安」という声をよく耳にします。
確かにそのような面もありますが、現在は鎮静剤や鎮痛剤を適切に使用することで、ウトウトした状態で検査を受けることができます。検査中の不安や痛み、お腹の張り、つらさを大幅に軽減できる場合が多いので、安心して検査を受けてください。
8割以上の方が「知らないうちにカメラが奥まで入っていた」「思ったより楽だった」とおっしゃいます。

信頼できる施設を選びましょう

検査を受けることを決意したら、以下のような施設を選ぶことをお勧めします。

・大腸カメラの経験が豊富
・消化器内視鏡専門医などの資格を持つ医師がいる
・鎮静剤の使用に対応している
・丁寧な説明をしてくれる
・最新で高画質の内視鏡システムを導入している
・通常径のスコープに加え、細径のスコープを常備している

大腸カメラ（大腸内視鏡検査）について

便潜血検査について日本の現状と課題

現在の日本では、便潜血検査が陽性であっても精密検査を受ける方は約60〜70%に留まっています。
これが先進国の中でも日本で大腸がんが減少していない大きな要因であるとされています。

便潜血陽性は予防のチャンス

便潜血1回陽性の場合の大腸がんの確率は約3%、2回陽性の場合は約10〜15%です。決して高い数字ではありませんが、十分にあり得る確率です。
便潜血陽性は大腸がんを早期発見・早期治療できるチャンスです。
さらに、大腸がんの元になるポリープがあった場合は、内視鏡でその場で切除することにより大腸がんの予防につながります。

便潜血検査についてよくある質問と回答

検査結果について

便潜血陽性=がんですか？: いいえ、必ずしもがんではありません。痔やポリープ、粘膜の軽度の炎症・損傷などでも陽性になることがあります。ただし、がんの可能性も否定できないため、必ず精密検査を受けてください。（一方陰性だからがんでないととも言えませんので、解釈にご注意ください）
1回だけ陽性なら様子を見てもいいですか？: いいえ、絶対にだめです。1回でも陽性が出たら必ず大腸カメラを受けましょう。1回陽性でも大腸がんが見つかる確率は約3%あります。
陽性になったらもう一度便潜血検査をしてもいいですか？: 便潜血検査の再検査は必要ありません。たとえ再検査で陰性になったとしても、一度陽性になった事実は変わりませんので、必ず精密検査である大腸カメラを受けてください。

症状について

陽性だったけど症状がありません。受診は必要ですか？: はい、必要です。大腸がんは早期には症状が出にくいため、症状がなくても大腸カメラを受けましょう。
便に目に見える血がなかったのに陽性になるのはなぜですか？: 便潜血検査はごく微量の血液も検出するため、肉眼で見えなくても陽性になります。だからこそ早期発見につながる有用な検査なのです。
痔があるのですが、それでも検査は必要ですか？: はい、必要です。痔と大腸がんが同時に存在することもあるため、痔があっても必ず大腸カメラを受けてください。

検査について

便潜血検査前に食事の制限は必要ですか？: 一般的には食事制限は不要です。日常通りで大丈夫です。現在の検査方法は人間の血液のみに反応するため、肉や魚を食べても影響ありません。
大腸カメラは痛いですか？: 形、伸びやすさ、硬さなど人によって腸の性質は様々です。とても楽に奥まで挿入できる方もいれば、挿入が難しく途中に痛みが出てしまう方もいらっしゃいます。それは実際挿入してみないとわからないものです。近年は挿入前に点滴から鎮静剤と鎮痛剤を適切に使うことによって、ウトウトした状態で検査を受けていただき検査苦痛を減らす方法を選択することも可能です。多くの方が「思ったより楽だった」とおっしゃいます。鎮静剤を使用した場合は当日の車の運転は原則しないでいただきます。
大腸ポリープが見つかったらどうするの？: ある程度の大きさと個数までは、その場で日帰りでの内視鏡切除が可能です。ポリープの中には大腸がんの元になるものもあるため、切除することでがんの予防につながります。（治療には必ず危険も伴うものですので、小さく危険性が低いと見積もられるポリープは医療側の判断で切除は行いません。必要性のあるものを判断し切除いたします。みつかったポリープをすべて切除するわけではありません）
大腸カメラを受けられない場合は？: ご高齢や持病の関係で大腸カメラが難しい場合は、医師と相談し他の方法による精密検査を検討します。ただし、診断と治療を同時に行える大腸カメラが最も推奨される方法です。